「一人ひとりのお客様に向き合ったお菓子作りをしていきたい。」
和菓子づくり一筋に培われた経験をもとに、「わがし京増」を立ち上げられました。 開業にあたり、包装箱が必要とのことで、お手伝いをさせていただきました。

コンテンツ
箱の仕様が決まるまで
お客様のご要望
- 50種類以上の型があり共通箱で使用したい
- 中で商品が動かないように
- 保管スペースを最小限にしたい
- 店名を入れたい
落雁の大きさ
お問い合わせの3つの希望サイズ
150×100×40mm と 150×100×50mm と 200×120×40mm
思った以上に箱の寸法が大きく「落雁がこの箱に何個入るのだろう?」私が高校で茶道部をやっていた時の茶菓子の落雁は、一口で食べられる小さなサイズでしたので、すぐに聞いてみました。すると、「1つの箱に1個入れる」との回答で、ますますサイズ感が疑問になり、作品の写真があれば見せていただきたいとお願いしました。
それで、送っていただいた写真。大きさはというと
「高砂(お爺さん・御婆さん)1つ 縦120×横70×高さ20mm 重量100g」
想像以上に大きい!!私が食べてた落雁とはまったくちがう。

まるでアート作品
見たことのない繊細な模様と色使い、落雁は確か木枠に材料を入れながら押し固めるはず、
こんなに細かい模様が作れるなんて、すごい!
こんな綺麗に色を表現できるなんて、すごい!
驚きの連続でした。
落雁とは
室町時代に中国から伝わったとされ、当初は竹の筒を用いて作られており、江戸時代から木型を使用するようになった。米や豆、小麦などから作った粉に砂糖や水飴を練り混ぜ、その木型に押し固めて乾燥させた和菓子。鯛や松竹梅など縁起の良い形が多い。
形を保つためには
落雁を保護するための緩衝材は何がいいか考えてみました。まず、セロパッキンを入手し、箱に入れてみました。が、セロパッキンは扱いが非常に難しく、適量をとっても長くバラバラとついてきてしまい、引っ張って切ると細かいカスがたくさん出て大変なことになってしまいました。そこで綿をご提案、綿を上下に入れ商品を柔らかく包み込み、運送時にも耐え、扱いも楽で、そしてなにより一番は崩れることなくお届けできる。
京増様は「食べて美味しいは譲れない、でも、商品が崩れてしまっては元も子もない」 と配送中の崩れをとても心配されていましたので、その不安はこれで少し解消できるかもしれません。

3サイズ作るのであれば、抜型不要の貼箱にスリーブ
希望サイズが3種ありましたので、抜型が不要のかぶせ貼箱をご提案。 綿を入れた状態で蓋をギュッと閉めなければならないので、貼箱にスリーブをつけて抑えることにしました。
- 箱のサイズは3種
- タント黒の紙を使ったかぶせ貼箱
- 蓋を抑えるための両面黒の紙を使ったスリーブ
これで箱の仕様が決まりました。
箱の仕様の変更(貼箱→紙組立箱)
保管場所の問題
初期投資が抑えられるので抜型不要の貼箱をおすすめしていたのですが、貼箱は箱の状態で保管することになるため、保管スペースがかなり必要になります。そこで、平で納品し必要な時に組み立てられる紙の組立箱ではどうかとご相談がありました。貼箱に比べ、紙組立箱は紙厚が薄くなるため、強度の部分が気になりましたが、緩衝材の綿で商品は保護できることがわかりましたので、保管場所のことを考え、紙の組立箱に変更となりました。
そして、箱のサイズも3種から2種に絞り、2つのサイズで、50種の落雁を上手く使い分けることになりました。
- 大サイズ 180×120×45mm
- 小サイズ 145×98×45mm
箔押し印刷で店名を入れる
最後は名入れ。通常はお客様にIllustratorの完全データをいただき、そこから版を作るのですが、お店の準備がお忙しい様子でしたので、希望の「文字・大きさ・位置」を教えていただき、私の方でデータを作りご確認いただきました。

「つやあり」か「つやなし」か
箔色の希望は、シルバーとうかがっておりましたが、シルバーには艶ありと艶なしがあります。そこで、決定したロゴで版を作り、実際の素材に2パターンの校正サンプルを準備し、お決めいただくことになりました。
箔色に関しては、どちらがお薦めということが言えず、完全に好みの問題になりますので、悩まれた場合は、校正サンプルを見てお決めいただく様にしています。結果、「シルバーつやあり」に決定しました。
シルバーは2種ですが、ゴールドに至っては、赤金系・青金系・消金と実に10種類ほど箔色があり、その全ての校正サンプルを準備することができませんので、豪華に見える箱を作りたいというお客様には、黒箱に3号金(つやありゴールド)をお薦めすることが多いです。


オープン準備中にもかかわらず
箱の納品前に落雁製作依頼
箱の作成依頼をお受けしていた私ですが、ちょうどその頃、義父と実父の13回忌の法要を控えており、その際にお客様にお渡しする品を考えていた所でした。京増様の素晴らしい落雁をお客様にお渡しできたら喜んでもらえるかも!と、一般的な当たり障りのないお茶か海苔かで済ませようとしていた私は、ダメ元で京増様に相談してみました。
お店のオープン準備で忙しくしているにもかかわらず、京増様から「対応可能です」と快 よくお返事いただき、時間がない中、落雁を20個作っていただけることになりました。

運送テスト合格
落雁を作っていただけることになり、それ用の箱も必要になりましたので、私は急遽、貼箱屋さんに無理を言って最速で貼箱を作ってもらいました。貼箱に綿を敷き、落雁をそっと入れ、上から綿で抑え、スリーブの代わりに「わがし京増」と印刷した帯を作って留めました。
埼玉から富山まで車で8時間あまり、道中かなり揺られていましたが、運送時のトラブルもなく、無事お客様に落雁をお渡しすることができました。
お渡ししたお客様の感想
「こんな綺麗な落雁見たことない」
「食べるのがもったいない」
「とても美味しかった」
皆さんに喜んでもらえて私もとても嬉しかったです。ありがとうございました。

完成した箱
できあがりました
7月末のオープンに間に合うよう、商品をお届けすることができました。 綿はふわっとしているので、物量は大きめになりますが、軽いので高い場所にも保管が可能です。2サイズの紙組立箱とスリーブは、平らな状態でお届けですので、保管場所はとりません。あとは、京増様の作り出す落雁を入れるだけです。とても楽しみです。

店舗情報
「季節を映し、想いを結ぶ。“生きた和菓子”を。」
和菓子づくりとは、命を吹き込むこと。
四季の気配、誰かの記憶、ひとときの感情をすくい取り、そっと小さな菓子の中に閉じ込めてゆきます。
それは、感情や風景、時間を映し出す“表現”のひとつです。
自然の移ろい、祝いと祈り、そして誰かの想い——
伝統の技に現代の感性を重ね、季節の彩りと人の想いを繊細に描く。
それが、私の「生きた菓子づくり」です。
日々の暮らしに寄り添い、人生の節目に彩りを添えるために、心に残るひとときをお届けします。

「かたちに宿る、和の工芸美」
—— 職人の繊細な技術で彫られた木型を使い、一つひとつ心を込めて仕上げた落雁。
落雁は、古くから日本の茶席やお祝いの場で用いられてきた、和の風情を宿す干菓子です。
その製作に欠かせないのが「木型」と呼ばれる道具。木型は熟練の職人が長年の経験と感性をもとに、繊細な文様を彫り込んでいます。
この木型に、丁寧に押し固めて形作ることで、落雁はまるで工芸品のような美しさをたたえます。伝統の技を今に受け継ぎながら、心を込めてお作りする落雁を、ぜひ大切な方への贈り物やご自身のひとときにご賞味ください。

わがし京増
製造所 :千葉県船橋市上山町3-525-104
電話 :047-413-6310